契約の解除

​①手付解除

売買契約において、 手付金が交付されたがその目的をはっきり定めなかった場合には、民法では「解約手付」と位置づけており、標準売買契約書も解約手付を採用しています。「解約手付」とは、 契約が成立したのち当事者の 一方が契約の「履行に着手」するまでは、売主様は手付金の倍額を買主様に返還して、買主様は売主様に交付した手付金を放棄して、それぞれ契約を解除することができるものです。 なお、 解除理由については特段必要ありません。ただし、「履行の着手」の解釈基準が不明確であるため、標準売買契約書では、売主様買主様が合意した手付解除期日を記載して、 その期日までは、 互いに解除権を認める内容となっています。

②引渡し前の滅失等による解除

(1) 引渡し前の滅失
引渡し前の滅失とは、売買契約締結後、売買物件を買主様に引渡すまでの間に、天災
地変(火災、地震、台風など)等により文字どおり無くなってしまうことや、使用できない状態になってしまうことをいいます。またその場合に、その損害を誰が負担(危険負担)するのかが問題になります。
標準売買契約書では、売買契約締結後、売主様、買主様の責任によらない天災地
変等により売買物件が滅失または毀損(一部の滅失)してしまったときは、売主様、買主様は売買契約を解除するか、続行するかの選択ができることになっています。
なお、契約を続行する場合は売買物件の毀損箇所について売主様に修復義務が発生し
ます。
(2) 解除の効果
天災地変等により売買物件が滅失または毀損したことにより、契約が解除されたとき、売主様は、買主様より受領した手付金等の金銭を、全額無利息にてすみやかに買主様に返還しなければなりません(違約金は発生しません)

(引渡し前の滅失・毀損)

第15条

 本物件の引渡し前に、天災地変その他売主又は買主のいずれの責にも帰すことのできない 事由によって本物件が滅失したときは、買主は、この契約を解除することができる。

2 本物件の引渡し前に、前項の事由によって本物件が毀損したときは、売主は、本物件を修 復して買主に引渡すものとする。この場合、売主の誠実な修復行為によって引渡しが標記の 期日(C)を超えても、買主は、売主に対し、その引渡し延期について異議を述べることは できない。

3 売主は、前項の修復が著しく困難なとき、又は過大な費用を要するときは、この契約を解 除することができるものとし、買主は、本物件の毀損により契約の目的が達せられないとき は、この契約を解除することができる。

4 第1項又は前項によってこの契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅 滞なく買主に返還しなければならない。

③契約違反による解除

 売主様、買主様のいずれかに契約違反があったとき、違反した者に対してその相手方は一定期間内に契約の履行を促し、それでも応じない場合には売買契約の解除を通告できます。
 

(1) 違約金の請求
民法では、契約違反によって売買契約が解除されたときは、違反した者にその解除に
よって生じた損害を賠償請求することができます。
しかし、その損害がいくらになるかを証明するのは困難なことです。そこで、売買契約書では、売主様と買主様で違約金の額を合意し、契約書に記載することになります。
なお、契約書で違約金を定めたとき、実損害がたとえ契約書の違約金額を上回っても、下回っても、その差額は売主様、買主様も互いに請求できませんし、違約金を請求するにあたって、実損害額の証明をする必要はありません。

 

(2) 違約金の支払い
契約違反により、売買契約が解除になったときは、次のとおり清算します。
1⃣ 売主様の契約違反による解除の場合
売主様は、買主様に対し、受領済みの金員を無利息にて返還するとともに違約金を支払います。
2⃣ 買主様の契約違反による解除の場合
違約金が、売主様が受領済みの手付金等の金員を上回る場合は、買主様は、売主様に対し、その差額を支払います。一方、売主様が受領済みの手付金等の額が、違約金相当額を上回る場合は、売主様は受領済みの金員から違約金相当額を控除した残額を、無利息にて買主様に返還します。

④瑕疵による契約解除

民法では買主様が瑕疵により契約の目的を達せられないときは、契約を解除できることになっています。契約が解除となったときは、 売買契約前の原状に回復することが必要であるとともに、買主様は売主様に対し、その解除によって生じた損害を賠償請求できることになっています。
売買契約書のうち一般仲介用の契約書では、土地の瑕疵で、修復では契約の目的が達せられないときは、引渡完了日から契約書記載の期間に限り、買主様は契約を解除することできます。
なお、売買契約書のうち、消費者契約用と売主宅建業者用の契約書では、土地瑕疵に限らず、修復では買主様の契約の目的が達せられないとき、消費者契約用の場合は引渡完了日から期限以内、売主宅建業者用の場合は引渡完了日から2年以内に限り、買主様は、契約を解除することができます。

⑤特約による白紙解除

1⃣融資利用の特約による解除
不動産を購入する際、金融機関等(社内融資を含む)からの融資(住宅ローン)を利
用する場合が多いのですが、 売買契約締結時点では確実に融資が受けられるかどうかわかりません。 そのため、 万一、融資の承認が得られない(減額された場合も含まれます)ときは、 買主様は売買契約を白紙解除することができます。
 契約書では、 買主様が融資の承認を得るまでの期限(融資承認取得期日) と、買主様が売主様に解除通告できる期限(契約解除期日)を契約書に記載し、 融資承認取得期日までに融資の承認が得られないとき、 買主様は契約解除期日までに売買契約を続行するか解除するかを選択します。 解除する場合は、契約解除期日までに売主様に解除する旨を通告することになります。

 

2⃣譲渡承諾の特約による解除
この特約が必要となるのは、 売買物件の土地の利用権が賃借権の場合です。 賃借権は
土地の所有者から土地を借りて利用する権利の一つですが、 この賃借権を第三者に譲渡するときは土地所有者の承諾が必要となります。
仮に、土地所有者の承諾を得ずに譲渡しますと、土地賃貸借契約は解除され土地所有
者から士地の明渡しを請求されてしまうことにもなります。
 そこで、標準売買契約書では、 売主様が合意した期限までに土地所有者から譲渡の
承諾を得られないときは、売主様は売買契約を解除することができます。

 

3⃣その他の特約による解除
売主様、買主様の合意により、ある一定の要件に該当することになったときには、売
買契約を白紙解除できる特約を付す場合があります。代表的なものとして買換特約、第三者からの許可、承諾の特約等があります。

 

4⃣解除の手続と効果
上記の特約により、売買契約が解除となったときは、売買契約前の原状に回復するこ
とが必要であり、売主様は、買主様から受領した手付金等の金銭を全額すみやかに返還
しなければなりません(違約金は発生しません)